そもそも請負契約書とは?収入印紙の金額や軽減措置などについても解説
「請負契約書とは何か」「印紙税と収入印紙の関係」などの疑問を抱える方も多いでしょう。本記事ではこのような疑問から、工事請負契約書に関連する基本知識、印紙税の軽減措置や収入印紙の不要なケースについて解説します。
また、節税のポイントや契約書に記載すべき項目についても紹介。「建築見積ソフトKensuke Neo」の導入事例を紹介し、見積作成の効率化についても解説します。
建築業界での契約書管理に役立つ情報を提供していますので、ぜひ参考にしてください。
そもそも請負契約書とは
請負契約書は、業務を他者に依頼する際に締結される契約書の一種です。請負契約においては、請負人が特定の業務を完成させることを約束し、その対価として注文者が報酬を支払う形態となります。建設工事やソフトウェア開発、ウェブサイト制作など、多岐にわたる業務で利用されています。請負契約書は、契約内容や条件を明文化するものであり、法的な拘束力を持つ文書なのです。
法律上、請負契約は口頭での合意のみでも成立する場合がありますが、特に建設工事などでは、法令に基づく書面の作成義務があるケースも。建設工事は契約金額が大きいためです。後のトラブルを防ぐためにも、具体的な条件や責任範囲を明確に記載した、請負契約書の作成が推奨されています。当事者双方が合意した内容が記録され、契約の履行や万一の紛争時における証拠として機能するのです。
印紙税、収入印紙とは
印紙税とは、一定の契約書や領収書など、経済的取引に関わる文書に課される税金です。印紙税法によって定められており、対象となる文書に収入印紙を貼付することで納付します。
収入印紙は、政府が発行する証票であり、印紙税の納税証明として機能。印紙税を納めるべき文書には、契約書、領収書、手形などが含まれますが、特に工事請負契約書はその典型例でしょう。文書に記載された金額に応じて収入印紙を購入し、貼付する必要があります。
印紙税が課される文書には、印紙税法別表第1で定められた20種類があります。課税対象文書を作成する際は、記載内容や取引金額に基づき、適切な額の印紙を用意しなければなりません。また、文書の作成者が納税義務者となり、納税のタイミングは文書の交付や署名・押印が行われた時点で発生します。非課税文書に該当しない限り、印紙税の適用を受けることになりますので、正確な知識を持っておきましょう。
工事請負契約書締結時に発生する印紙税額
工事請負契約書締結時に発生する印紙税額は、契約金額によって決められています。
- 1万円未満のもの:非課税
- 1万円以上100万円以下のもの:200円
- 100万円を超え200万円以下のもの:400円
- 200万円を超え300万円以下のもの:1,000円
- 300万円を超え500万円以下のもの:2,000円
- 500万円を超え1,000万円以下のもの:1万円
- 1,000万円を超え5,000万円以下のもの:2万円
- 5,000万円を超え1億円以下のもの:6万円
- 1億円を超え5億円以下のもの:10万円
- 5億円を超え10億円以下のもの:20万円
- 10億円を超え50億円以下のもの:40万円
- 50億円を超えるもの:60万円
- 契約金額の記載のないもの:200円
収入印紙が不要な場合
収入印紙が必要ない、いくつかのケースがあります。2つの事例について、具体的に見ていきましょう。
所轄税務署長の承認を受けた場合
特定の条件を満たした課税文書については、所轄税務署長の承認を得ることで、収入印紙を貼付せずに印紙税を納付できます。この承認を受けるには、まず課税文書の形式が統一されていることが必要。また、文書の作成事実が後日明確に確認できるものであることも要件の一つです。
さらに、毎月継続して作成されるものや、特定の日に大量に作成される文書であることも条件に含まれます。このような場合は収入印紙の貼付に代わり、課税文書に規則で定められた表示をすることで、金銭での納付が認められるのです。
電子契約の場合
紙媒体とは異なり、電子契約においては印紙税が課されません。電子契約が印紙税法上の課税文書の「作成」に該当しないと解釈されているためです。
具体的には、電子データによる契約書の作成は、物理的な文書の作成とは異なり、印紙税法における課税文書と見なされないためです。したがって、電子メールや電子署名によって契約を締結する場合は、収入印紙の購入や貼付が不要となります。しかし、電子契約後に紙媒体での文書が別途作成され、それが交付された場合は、その紙文書に対して印紙税が課されることになるため、注意が必要です。
工事請負契約における印紙税の軽減措置
2024年4月1日から2027年3月31日までに作成された建設工事請負契約書については、国税庁によって印紙税の軽減措置が設けられています。この措置は、契約金額が100万円を超えるものに適用され、通常の印紙税額よりも軽減された税額で納付可能。
軽減措置は、建設工事請負契約書だけでなく、契約金額や請負内容の変更・追加に関する変更契約書や補充契約書にも適用されます。
工事請負契約の軽減措置の概要
軽減措置は印紙税法の規定に基づき、特定の要件を満たした工事請負契約書について、軽減された税額での納付を認めるものです。
対象となるのは、契約金額に応じて以下の税額が設定されています。
契約金額 |
本則税率 |
軽減後の税率 |
|
不動産譲渡契約書 |
建設工事請負契約書 |
||
10万円超50万円以下 |
100万円超200万円以下 |
400円 |
200円 |
50万円超100万円以下 |
200万円超300万円以下 |
1千円 |
500円 |
100万円超500万円以下 |
300万円超500万円以下 |
2千円 |
1千円 |
500万円超1千万円以下 |
1万円 |
5千円 |
|
1千万円超5千万円以下 |
2万円 |
1万円 |
|
5千万円超1億円以下 |
6万円 |
3万円 |
|
1億円超5億円以下 |
10万円 |
6万円 |
|
5億円超10億円以下 |
20万円 |
16万円 |
|
10億円超50億円以下 |
40万円 |
32万円 |
|
50億円超 |
60万円 |
48万円 |
※参照元:国税庁(「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の印紙税の軽減措置の延長について)
軽減措置があるため、業者は税負担を軽減しつつ、適正な税務処理ができるのです。
軽減措置の対象となるもの
軽減措置の対象となるのは、建設業法第2条第1項に規定されている建設工事の請負契約書です。初期の工事請負契約書に加え、工事内容や金額に変更が生じた際に作成される、変更契約書や補充契約書も含まれます。契約書に建設工事以外の請負内容が含まれていても、建設工事に関する部分があれば軽減措置の対象となります。
軽減措置の対象とならないもの
一方で、すべての請負契約書が軽減措置の対象になるわけではありません。建設業法第2条第1項に該当しないもの、例えば建物の設計契約や建設機械のメンテナンス契約などは対象外です。また、建物内の家具や機械の製造、修理に関する契約書も同様に、軽減措置の対象にはなりません。適用されるかどうか判断が難しい場合は、専門家に相談しましょう。
工事請負契約の印紙税を節税する際のポイント
工事請負契約書にかかる印紙税を節税するための方法としては、契約金額の表示方法と契約書の整理方法が重要です。
契約金額を税抜表示にする
印紙税は契約金額に基づいて計算されますが、契約書において消費税額を明記することで、税抜き金額を基にした印紙税の適用が可能です。消費税を含めた総額で記載するのではなく、税抜金額と消費税額を区分して記載することで、印紙税額を低く抑えられるのです。
契約書を1つにまとめる
設計契約と工事契約を別々に作成すると、それぞれの契約書に対して印紙税がかかります。しかし、設計契約を工事請負契約書に含めることで、全体の契約金額が軽減措置の対象となり、結果的に印紙税の節税が可能となるのです。これにより、総額での印紙税負担が減少し、企業の税務負担を軽減できます。
工事請負契約書に記載する16項目
工事請負契約書には、契約内容を明確にするために、建設業法第19条第1項で規定された16項目を記載する必要があります。
- 工事の内容:工事名や実施場所など、工事の詳細を記載
- 契約金額:請負代金を記載し、消費税の有無を明記
- 工事期間:工事の開始日と完了日、引き渡し期日を明記
- 施工しない日もしくは時間帯:工事を行わない日や時間帯を指定
- 支払方法:契約金額の支払いタイミングと方法を記載
- 工期の変更・中止:発注者が工事を中止や変更した場合の取り扱いについて
- 不可抗力に伴う工期変更や損害の扱い:自然災害などによる工事変更の責任分担を記載
- 契約金額や工事内容の変更:工事内容や契約金額の変更手続きについて明記
- 第三者の被害に対する賠償:工事中に第三者に被害を与えた場合の対応を定める
- 発注者の資材提供や機械の貸与に関する定め:発注者が提供する資材や貸与する機械の取り扱いを記載
- 引き渡しの条件について:工事完了後の建物引き渡し方法と条件を明記
- 契約金額の支払い時期と方法:支払いスケジュールと方法について詳細を記載
- 建物に瑕疵のあった場合の対策:瑕疵が発見された場合の責任範囲と対応方法を定める
- 債務不履行に関するペナルティ:契約不履行時の違約金や遅延利息について記載
- 紛争の解決方法:契約に関する紛争が発生した場合の解決手段を明記
- そのほか国土交通省で定める事項:国土交通省が求めるその他の必要事項を記載
これらの項目をしっかりと記載することで、契約に関するトラブルを未然に防ぎ、スムーズな工事進行が可能になります。
収入印紙なしの工事請負契約書は無効になる?
工事請負契約書に収入印紙を貼付することは、印紙税法に基づく税金の納付を意味します。しかし、収入印紙を貼らなかったとしても、契約書自体の有効性には影響を与えません。つまり、印紙の貼付がなくても契約内容は法的に有効であり、契約当事者はその内容に基づいて義務を履行しなければなりません。
収入印紙を貼り忘れた場合のペナルティ
収入印紙を貼り忘れた場合は、過怠税というペナルティが課せられる場合があります。もし税務調査で発覚した場合、本来支払うべき印紙税の3倍の過怠税が課されるのです。自主的に申し出た場合でも、本来の印紙税の1.1倍が徴収されます。また、貼付した印紙に消印をしていなかった場合も、同様に過怠税が課せられます。
契約書が無効になるケース
契約書が無効とされる場合は、印紙の有無にかかわらず、契約内容自体に問題がある場合です。例えば、契約内容が不明確であったり、違法な内容、実現不可能な内容であった場合などです。こうした契約書は、法的に無効と判断されてしまうため、内容を明確かつ合法的に記載しなければいけません。
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工事請負契約書と収入印紙の関係を理解しよう
いかがでしたでしょうか?請負契約書に関する基本知識や、印紙税の扱いについて理解が深まったかと思います。
工事請負契約書の印紙税軽減措置や収入印紙が不要なケースは、節税対策として重要なポイントです。また、契約書に記載すべき項目や、印紙の貼り忘れに伴うリスクについても把握しておきましょう。
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株式会社アドバン代表取締役社長
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