公開日 2024.08.20 更新日 2024.09.13

工事原価とは?概要と工事原価を構成する4つの要素

「工事原価は何の原価?」「どのような要素で構成されるの?」などの疑問を抱いていませんか。詳細がわからず困っている方もいるでしょう。工事原価は、建物をつくるときの原価です。

材料費や労務費などで構成されます。ここでは、工事原価の概要と工事原価を構成する4つの要素を解説するとともに関わりが深い建設業会計の特徴や建設業会計のメリット・デメリットなどを紹介しています。工事原価について、理解を深めたい方は参考にしてください。

 

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工事原価とは

簡単に説明すると、建設業会計で用いられる科目です。具体的には、建物をつくる際にかかった原価(工事で収入を得るためにかかった原価)を指します。工事原価は完成工事原価と未成工事支出金にわかれます。これらを用いて、当期の工事原価を算出するのです。

完成工事原価

一般会計の売上原価に相当する工事原価といえるでしょう。つまり、完成した工事の売上高(完成工事高)に対する工事の原価を意味します。ポイントは、当該年度の損益計算書に計上されることです。

未成工事支出金

未成は「まだ完成していないこと」を意味します。つまり、未成工事支出金は未完成の工事にかかった工事原価を指します。基本的には、仕掛品に相当すると考えればよいでしょう。ポイントは、翌年度以降に繰り越して計上することです。

工事原価の4要素

工事原価は、主に以下の要素で構成されます。

【4つの要素】

  • 材料費
  • 労務費
  • 外注費
  • 経費

続いて、これらの要素について解説します。

材料費

工事に用いた材料の仕入れにかかった費用です。材料費は直接材料費と間接材料費にわかれます。直接材料費は当該工事を目的とする材料費、間接材料費は当該工事だけを目的としない(複数の工事で使用する)材料費といえるでしょう。後者は、当該工事で使用したと見込まれる分だけを工事原価に算入します。工事台帳などに材料費を記載する際は、完成工事原価と未成工事支出金の分類に注意が必要です。

労務費

工事に関わるスタッフの賃金、福利厚生などです。工事に関わっていれば、雇用形態による区別はありません。当該工事に関わったスタッフ、当該工事にかかった時間などを適切に管理しておくことが大切です。一方で、工事に関わらないスタッフの賃金、福利厚生費などは工事原価に含まれません。たとえば、工事に関わりのない事務員の賃金などは、人件費として販管費に計上します。

関連記事:建設業における労務費とは?計算方法や人件費との違いを解説

経費

工事にかかった費用のうち、材料費・労務費・外注費に当てはまらないものです。具体例として、水道光熱費、通信費、機器のメンテナンス費などがあげられます。これらの中には、工事に直接関わっているといいにくいものもあります。したがって、間接経費として計上されるものが少なくありません。間接経費の按分に注意が必要です。

外注費

工事の作業を外部の企業や職人に委託した際にかかる費用です。一般的に、工事原価に占める割合が大きいと考えられています。外注費と労務費の振り分けに注意が必要です。材料を自社で仕入れて作業だけ外部の企業等へ委託した場合は、労務費の労務外注費として処理します。人材不足などを理由に外部の企業から工事に関わるスタッフを派遣してもらった場合も同様です。

工事原価は管理が必要

建設業界の主な特徴として以下の点があげられます。

  • 受注生産を原則とする
  • 受注から完成まで時間がかかる

以上の特徴を踏まえて、財務諸表で工事原価の報告を求められます。建設会社の業績、経営状態を正しく評価するためです。財務諸表は、税務申告や建設業許可の取得、更新で提出します。また、工事原価の管理は、見積額の算出にも欠かせません。資材価格や労務費が高騰する中、その重要性は高まっています。

工事原価の管理が難しい理由

一般的に、工事原価の管理は難しいと考えれています。主な理由は次のとおりです。

特殊な勘定科目を用いる

建設業界の会計では、特殊な勘定科目を用います。「建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類」に基づき、財務諸表を作成するためです。冒頭で説明した未成工事支出金も特殊な勘定科目のひとつといえるでしょう。未成工事支出金は、仕掛品あるいは半製品に該当します。慣れない勘定科目を用いるため難しいと考えられているのです。

出典:国土交通省「建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類」

売上や原価を計上するタイミングが難しい

売上や原価を計上するタイミングにも特徴があります。未上場の中小企業(任意適用)以外は、新収益認識基準に基づく売上の計上を求められます。新収益認識基準は、売上の認識と財務諸表への反映方法に関する新しいルールです。同基準では、収益を認識するための5ステップが設けられています。主な特徴は、履行義務を充足した一時点または履行義務を充足するにつれ(一期間)収益を認識することです。前者は工事完成基準、後者は工事進行基準に似ているといえるかもしれません。売上、原価を計上するタイミングが複雑になりやすい点も難しさを感じる理由です。

出典:国税庁「『収益認識に関する会計基準』への対応について~法人税関係~」

費用構成が複雑で難しい

工事原価は、費用の構成も複雑になりがちです。一例としてあげられるのが、以下の要素で構成される公共建築工事の工事費です。

  • 直接工事費
  • 共通費
  • 消費税等相当額

共通費は「共通仮設費」「現場管理費」「一般管理費等」で構成されます。これらの中には、工事に含むものと含まないものがあります。したがって、工事原価の管理が難しくなります。

出典:国土交通省「公共建築工事の工事費積算における共通費の算定方法及び算定例」

外注費と労務費の線引きが難しい

外注費と労務費の線引きが難しい点もポイントです。たとえば、外部の企業から工事に関わるスタッフを派遣してもらった場合は、外注費ではなく労務費の労務外注費として処理します。この点も、難しさを感じる理由のひとつです。

経理作業は時間と手間がかかる

経理担当者の負担が大きくなりやすい点にも注意が必要です。建設会社の多くは、各現場の原価情報を経理部門で管理しています。管理システムを導入していないと、経理担当者は配賦基準に従い手作業で配賦作業を行わなければなりません。したがって、工事原価の管理は難しいといわれているのです。

建設業会計の特徴

建設業会計は、建設業界の特殊性を踏まえた会計基準です。ここでいう特殊性は、着工から完成まで長い時間を要することといえるでしょう。主な特徴として、特有の勘定科目があげられます。具体的には、完成工事高、完成工事未収入金などが設けられています。計上基準が、収益認識基準と工事進行基準に分かれる点もポイントです。建設業会計には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

建設業会計のメリット

建設業会計では、工事の進捗にあわせて売上を計上できます(工事進行基準)。したがって、建築会社の現状を正確に表せます。たとえば、2年かかる工事を請け負っているため、1年目の売上がゼロ円になるといったことを防げます。経営状態を正確に表せるため、金融機関から融資を受けやすくなったり、投資家から投資を受けやすくなったりするでしょう。

 

建設業会計のデメリット

建設業会計の主なデメリットとして不明瞭さがあげられます。工事進行基準では、進捗の評価、工期の設定により、利益を多く見せたり少なく見せたりすることが可能です。不正が明らかになると社会的信用を失ってしまいます。会計監査を適切に機能させることが重要です。

建設業会計と一般会計の違い

続いて、建設業会計と一般会計の主な違いを紹介します。

勘定科目

建設業会計は特殊な勘定科目を使用します。具体例は以下のとおりです。

建設業会計の勘定科目  概要 
完成工事高  一般会計の売上高に相当 
完成工事未収入金  一般会計の売掛金に相当 
完成工事原価  一般会計の原価に相当 
未成工事受入金  一般会計の前受金に相当 
工事未払金  一般会計の買掛金に相当 

各勘定科目の意味を理解しておくことが大切です。

原価計算

工事現場ごとに原価を管理する点も建設業会計の特徴といえるでしょう。材料費、労務費、経費に外注費が加わるため、原価計算が複雑になりやすい点もポイントです。各工事に番号を設定して、かかった費用を工事ごとに振り分けるなどの対応が行われています。

収益認識

2021年に新収益認識基準が導入されるまで、工事完成基準と工事進行基準で収益認識を行っていました。新基準の導入でこれらは廃止され、現在は履行義務を充足した時点に収益認識を行っています。一般会計との主な違いは、一定の期間にわたり収益を認識するケースが多いことといえるでしょう。

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工事原価の管理と同じく、手間がかかりやすい業務として建築見積書の作成があげられます。建築見積書を効率よく作成したい方は「建築見積りソフトKensuke Neo」を活用してみてはいかがでしょうか。「Kensuke Neo」は、エクセル感覚で扱える本格的な建築見積ソフトです。誰でも簡単に操作できるうえ、豊富な機能を備えているため業務を効率化できます。工事原価ソフト「Neo原価」などと連携して、仕上積算から原価管理まで一気貫通で行える点も魅力です。

建築見積ソフト「Kensuke Neo」の導入事例

参考に、「建築見積りソフトKensuke Neo」の導入事例を紹介します。

株式会社山上組様の導入事例

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積算の効率化に課題を抱えていた事例です。主な原因は、担当できるスタッフが限られていたことです。誰でも扱える建築見積ソフトとして「Kensuke Neo」を導入しています。期待していたとおり、操作をすぐに覚えられました。手作業での積算に比べ、業務を5~10倍も効率化しています。

株式会社山上組様の導入事例を詳しく見たい方はこちら

株式会社ナカシロ様の導入事例

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積算業務に時間がかかり過ぎていたことに悩んでいた事例です。対策として「Kensuke Neo」のトライアルを試しました。お試し期間中に実物件で試したところ、特別な指導を受けなくても操作できることがわかったため、正式導入に至りました。現在は、建築部員全員が操作できる体制を目指しています。

株式会社ナカシロ様の導入事例を詳しく見たい方はこちら

石坂建設株式会社様の導入事例

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積算の負担が重く、他の業務に支障がでていた事例です。負担軽減を目指して「Kensuke Neo」を導入しました。手作業の積算に比べ、5倍程度、業務を効率化できたと評価しています。現在は、空いた時間を活用して見積書の吟味を行えるようになっています。

石坂建設株式会社様の導入事例を詳しく見たい方はこちら

【導入事例をもっと見る】 

 

工事原価を適切に管理しましょう

ここでは、工事原価について解説しました。工事原価は建設業会計で用いられる科目です。完成工事原価と未成工事支出金にわかれます。構成する要素は、材料費・労務費・経費・外注費の4つです。工事原価の管理は、見積額の算出や利益率の把握などに欠かせません。

見積業務を効率化したい方には、充実した機能とエクセル感覚で扱える操作性が魅力の建築見積ソフト「建築見積りソフトKensuke Neo」がおすすめです。興味がある方は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修者
株式会社アドバン
田中 博幸

株式会社アドバン代表取締役社長

「建設関連ソフトを通して世の中に貢献する」がモットーです。 創業から20年以上、重要な業務である積算や見積書作成などの効率化・高精度化に貢献したいとの思いで、建設業に特化したシステムの開発に取り組んできました。
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