建設業における一般管理費の比率とは?概要や重要性を解説

企業の経営を安定させるためには、一般管理費の適切な管理が欠かせません。
一般管理費とは、工事に直接関与しないものの、企業の運営に必要な経費を指します。
また、工事費全体に占める割合を示すのが「一般管理費の比率」です。本記事では、一般管理費の比率の概要や計算方法について解説します。
一般管理費の比率の基礎知識
建設業における経営の安定性を確保するためには、工事に直接関与しない費用である一般管理費の適正な管理が欠かせません。ここでは、一般管理費の比率の基本的な考え方と、計算方法を解説します。
一般管理費の比率とは
企業の売上や工事原価に対して、一般管理費がどの程度を占めるかを示す割合です。この比率は、経営の効率性を測る指標に用いられ、適切な管理が求められます。
一般管理費には、経営陣の給与や事務所の維持費などの工事に直接関わらない経費が含まれるのが特徴です。これらの費用は、事業運営には不可欠ですが、適正な比率を維持しなければ利益を圧迫する原因となります。
そのため、一般管理費の比率の適切な設定が、企業の経営を安定させるポイントです。
一般管理費の比率の計算方法
一般管理費の比率は、企業の形態によって計算方法が異なるのが特徴です。以下の計算式で求められます。
形態 | 計算式 |
企業の場合 | (販売費及び一般管理費-販売費)÷売上原価×100 |
公益法人の場合 | 管理費÷事業費×100 |
建設業においては、工事原価を基準に一般管理費率を算出します。総工事費が1億円で一般管理費が1,500万円の場合は、一般管理費の比率は15%です。
一般管理費率の重要性
一般管理費率は、建設業の経営において重要な指標の1つです。公共工事に関わる企業は、国の基準に基づいた適切な一般管理費率の設定が求められます。
また、経済状況や業界の変化に応じて、国土交通省による基準の見直しが行われることも。そのため、最新の改定内容を把握し、適切な経営戦略を立てることが重要です。
ここでは、一般管理費率の基準や改定について解説します。
国土交通省によって比率が決まっている
一般管理費率は、国土交通省が定める基準に従う必要があります。過度なコスト削減による品質の低下や、従業員の待遇悪化を防ぐために設けられた仕組みです。
公共工事などの入札に参加する際、企業が一般管理費を極端に削減しないように、国土交通省は最低基準を設定しています。
基準に従わないと、入札で不利になったり、経営の健全性が損なわれたりするリスクがあります。そのため、建設業者は基準を正しく理解し、適切な比率の維持が重要です。
一般管理費率の改定について
2022年4月、国土交通省は土木工事に適用する一般管理費率の大幅な改正を実施しました。この改正により、一般管理費率の上限と下限が引き上げられました。
工事原価 | 一般管理費等率
(改定前) |
一般管理費等率
(改定後) |
500万円以下 | 22.72% | 23.57% |
500万円超え30億円以下 | -5.48972×LOG(Cp)+59.4977 | -4.97802×LOG(Cp)+56.92101 |
30億円超え | 7.47% | 9.74% |
Cp:工事原価(円)
改定は、建設会社の適正な利益確保を支援するのが目的です。企業が利益を上げられなければ、従業員の給与が減少し、人材確保が困難になる可能性があります。
反対に、適正な管理費率を確保すれば、企業の財務基盤が安定し、長期的な成長につながります。
建設業における一般管理費とは
工事を進めるためには、工事そのものにかかる費用だけでなく、企業の運営や経営を支えるための費用も発生します。
このうち、工事現場に直接関与しないものの、会社の経営を維持するために必要な費用が「一般管理費」です。
ここでは、一般管理費が工事費のどのような位置づけになるのかを解説し、内訳を見ていきます。
工事費に含まれる項目の1つ
建設業における一般管理費とは、工事現場に直接関与しないものの、企業の運営や経営を維持するために必要な費用 のことです。
下記のような、会社を存続させるために不可欠な支出が含まれます。
- 従業員の給与
- 福利厚生費
- 事務所の家賃
- 通信費
- 消耗品費
一般管理費は、工事費の一部に計上されるため、適切な管理が求められます。費用が適正でない場合、企業の利益が圧迫され、経営の安定性が損なわれる可能性があるためです。
工事費の中でどのような位置づけになるのかを正しく理解し、適切な管理を行うことが大切です。
工事費の内訳
工事費のおもな内訳は、以下の3つです。
- 工事原価(直接工事費+間接工事費)
- 一般管理費(企業運営に必要な管理費用)
- 消費税相当額
工事原価には、材料費や労務費などの直接工事費と、共通仮設費や現場管理費などの間接工事費が含まれます。
一方、一般管理費は企業の事業全体を支えるための費用であり、現場ごとに発生するものではなく、会社全体の経費に計上されます。
関連記事:建設業における労務費とは?計算方法や人件費との違いを解説
一般管理費と他の費用項目との違い
建設業において発生する費用には、工事に直接関わる費用と、企業全体の運営に必要な費用があり、その性質によって異なる勘定科目が適用されます。
それぞれの役割を理解し、適切な管理を行うことが、企業の財務健全性を維持する上 で重要です。ここでは、それらの違いを解説します。
工事原価
工事原価は、現場で発生する費用を指します。具体的には、下記のような費用のことです。
- 材料費(材料の購入費)
- 労務費(従業員の給与や福利厚生)
- 外注費(外注サービス費用)
- 重機費(重機の使用料)
- 仮設費(仮設設備の設置と撤去にかかる費用)
工事原価は「直接工事費」「共通仮設費」「現場管理費」から構成される、純工事費として捉えられます。現場管理費は工事原価に含まれますが、一般管理費は工事原価には含まれないという区分けがされています。
現場管理費
工事現場を管理運営するために必要な費用です。現場作業に携わる人の給与、工事中の建物に掛ける保険、近隣住民に対する防音対策や補償費用などが含まれます。
一般管理費が会社全体の維持管理に必要な費用であるのに対し、現場管理費は特定の工事現場に直接関連する管理費用なのが特徴です。
共通仮設費
工事全体に共通して必要となる、仮設物や仮設作業に関する費用です。工事を円滑に進めるために必要な基盤的な費用に位置づけられ、工事原価の一部に計上されます。
一般管理費が企業全体の運営に関わる費用であるのに対し、共通仮設費は特定の工事現場における共通的な仮設施設や作業に関する費用です。
一般管理費の内訳
一般管理費の内訳は、下記のとおりです。
- 人件費に関わる項目
- 建設に関わる項目
- 税金に関わる項目
- その他の項目
項目ごとに詳しく解説します。
人件費に関わる項目
人件費は、一般管理費の中でも大きな割合を占め、企業の運営や従業員の労働環境を維持するために必要な費用です。おもな内訳は、下記のとおりです。
- 経営陣に支払われる役員報酬
- 従業員の給与手当
- 退職金
給与手当には、基本給やボーナス、通勤手当などが含まれます。建設業では、現場作業員の給与が工事原価に計上されます。
ただし、本社の事務スタッフや管理職の給与は、一般管理費と扱われるのが特徴です。
また、企業が負担する健康保険料・厚生年金・雇用保険など、法定福利費も人件費に含まれます。さらに、健康診断費や忘年会・新年会などの費用は、福利厚生費に計上されます。
人件費は、勘定項目では下記に分類されます。
- 役員報酬
- 給与手当(給与・ボーナス・各種手当)
- 退職金
- 法定福利費(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険)
- 福利厚生費(社員旅行、健康診断費用、慶弔見舞金など)
これらの費用を適正に管理し、企業の財務基盤を安定させることが重要です。
建設に関わる項目
企業の事業基盤を維持するためには、オフィスや倉庫の賃貸費用、設備の購入や維持管理に関わるコストの適切な管理が重要です。
これらの支出は、企業のインフラを支えるものであり、長期的な計画が求められます。
おもな内訳は、下記のとおりです。
- 事務所・倉庫・資材置き場などの賃貸料である地代家賃
- 建物や設備の購入費用を耐用年数に応じて分割計上する減価償却費
- 事務所や工場で使用する電気・ガス・水道代を含む水道光熱費
- コピー機・複合機・建設機械などのリース契約によるリース料
- 新技術の研究開発やシステム導入にかかる開発償却費
- 設備のメンテナンスや災害復旧などに要する維持修繕費
これらの費用を適切に管理すれば、企業の安定した事業運営を実現できます。
建設関連費に関する勘定項目は、以下のとおりです。
- 地代家賃(事務所・倉庫・資材置き場の賃料)
- 水道光熱費(電気・ガス・水道代)
- リース料(コピー機、建設機械などのリース費用)
- 減価償却費(建物・設備の償却費)
- 開発償却費(新技術やシステム開発の償却費)
- 維持修繕費(建物や設備の修繕費)
これらの支出は企業の運営に不可欠なものです。適正な予算を立て、コストの最適化が求められます。
税金に関わる項目
企業が納付する税金のうち、経費に計上できるものは租税公課として扱われます。
建設業においても、契約や不動産の取得、設備の所有に伴いさまざまな税金が発生します。
おもな税金関連費は、下記のとおりです。
- 契約書や請求書に貼付する印紙税
- 法人設立や不動産登記時に発生する登録免許税
- 所有する土地や建物に課される固定資産税
- 自治体が課税する都市計画税
税金関連費は支払額が大きく、企業の資金繰りや経営に直接影響を与えるため、計画的な資金管理が必要です。
適正な納税を行うことで、企業の信用を維持し、健全な事業運営を継続可能です。
税金関連費に関する勘定項目は、租税公課に分けられます。企業の財務に大きく影響を与えるため、適切な資金計画を立て、納税義務を確実に果たすことが重要です。
その他の項目
企業運営には、工事原価や人件費などのほかにも、さまざまな支出が発生します。これらは「その他の費用」に分類され、日々の業務を円滑に進めるために必要なコストとなります。
おもな費用は、下記のとおりです。
- 事務用品や備品の購入にかかる消耗品費
- 電話やインターネットの利用料を含む通信費
- 火災保険や労災保険などの保険料
また、社員の出張や通勤手当などにかかる旅費交通費、振込手数料や組合年会費など、ほかの項目に分類しにくい支出は雑費に計上されます。
これらの費用は1つの金額が比較的小さい場合もありますが、積み重なると企業の財務状況に影響を及ぼします。そのため、適正なコスト管理を行い、無駄な出費を防ぐことが重要です。
その他の費用に関する勘定項目は、以下のとおりです。
- 消耗品費(文房具、事務用品、オフィス備品)
- 通信費(電話代、インターネット回線、郵便代)
- 保険料(火災保険、労災保険)
- 雑費(振込手数料、組合年会費、クリーニング代)
適切な管理によって、企業の財務の健全化と効率的な運営を実現できます。
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一般管理費を知って正しく比率を設定しよう
建設業における一般管理費の比率は、企業の経営を安定させるために重要な指標です。一般管理費は、工事に直接関与しないものの、企業の運営を維持するために欠かせない費用であり、割合の適正な管理が求められます。
とくに公共工事では国土交通省の基準が定められており、過度なコスト削減は経営の健全性を損なうリスクがあるため注意が必要です。適切な一般管理費の比率を維持すれば、利益の確保や従業員の待遇向上、事業の継続性を確保できます。
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株式会社アドバン代表取締役社長
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