建築積算数量の拾い方とは?手作業の注意点や効率化のポイントを解説

建築積算における数量の拾い出しは、見積もり精度を左右する大切な作業です。図面から必要な数量を正確に抽出するには、専門知識と丁寧な確認作業が欠かせません。
特に手作業で実施する場合は、拾い落としや計算ミスを防ぐ工夫が必要です。
本記事では、建築積算数量の拾い出し方法や注意点、作業を効率化するポイントを分かりやすく解説します。拾い出し業務に不安を感じている方はぜひ参考にしてください。
建築積算数量の拾い出しとは
建築積算において「数量の拾い出し」とは、設計図面や仕様書に示された寸法・材料・工法を読み解き、工事に必要な資材や労務量を数値として抽出するプロセスを指します。
平面図や立面図、断面図など多様な図面を突き合わせながら数量を正確に導き出し、その数値を単価表と掛け合わせて工事費の基礎を形づくる作業です。
拾い出しの精度が見積もり全体の信頼性を決定づけると言っても過言ではありません。
拾い出しの必要性
拾い出しは工事費を構成するあらゆる要素の出発点であり、ここで生じた誤差は資材手配から工期、最終的な利益率まで連鎖的に影響します。
図面に基づいて正確な数量を算出できれば、適切な予算配分と資材発注が可能となり、現場での資材不足や余剰在庫によるロスを防げるのです。
また、発注者に提示する見積額の根拠が明確になり、コスト交渉の説得力も高まります。
反対に拾い落としや計算ミスがあると、追加発注によるコスト増や工期遅延のリスクが顕在化し、企業の信頼や利益を損なう恐れがあります。
数量拾いは単なる事務作業ではなく、プロジェクト全体の品質と収益性を支える不可欠な業務なのです。
建築積算数量の拾い出しを行う方法
数量の拾い出しは「図面を読む」「数量を測る」「費用を積み上げる」という三つのステップを実施します。
まずは図面に書かれた寸法を正確に読み解き、次にロスを加味して適切な数量を確定し、最後に単価を掛け合わせて工事費を導き出します。
この流れを押さえておけば、拾い出しの精度とスピードが飛躍的に向上するでしょう。
ここからは、実務で頻繁に取り上げられる二つの数量と、費用算出の基本的な考え方を順に確認していきます。
設計数量と所要数量
設計数量とは、図面上の寸法や記号をもとに算出した「理論上の数量」です。
例えば、柱筋の本数やコンクリート壁の面積など、図面に示された寸法を忠実に計算すれば導き出せます。
しかし、現場では標準寸法に合わせて材料を切断する際に端材が出たり、組立て作業でどうしてもロスが生じるため、そのままでは不足が起こりかねません。
そこで設計数量に割増係数を乗じて求めるのが所要数量です。
鉄筋なら5%、ボルトなら4%というように部材ごとに係数が定められており、公共建築数量積算基準を参照すれば標準値を確認できます。
※参照元:国土交通省(公共建築数量積算基準)
費用を算出する方法
費用計算は「工事費=所要数量×単価」で表現できます。
ここで言う単価は、最新の市場価格や過去の発注実績、さらに地域係数まで考慮した金額を設定するのがポイントです。
数量が正しくても単価が古ければ見積精度は低下しますし、その逆も考えられます。
また、直接工事費だけでなく、労務費や機械費、共通仮設費などの間接費も忘れずに計上しましょう。
最近は積算ソフトに標準単価データベースが組み込まれているため、数量を入力するだけで工事費を自動集計できる環境が整いつつあります。
建築積算を手作業で拾い出しする際の注意点
手作業で数量を拾い出しする場合、図面の読み取りから計算、転記までの各工程に細かな落とし穴が潜んでいます。
わずかな桁のミスや図面の見落としは、そのまま見積精度の低下や追加コストにつながるため、常に複数視点でチェック体制を整えなければいけません。
ここでは、建築積算を手作業で拾い出しする際の注意点について見てみましょう。
数量の拾い落としに気をつける
図面上のすべての必要な情報は、拾い漏らさないように注意しましょう。拾い漏れが出ると、工事にさまざまな悪影響が生じます。
たとえば拾い漏れで材料や工数が不足すると、工事費の見積りが低くなる可能性があります。また見積りが高くなった場合は、受注が不利になる可能性もあるでしょう。
加えて人員不足などの問題も生じるため、作業が遅延し工事が間に合わない可能性も考えられます。
拾い出した数量を複数人で確認するなど、数量に誤差が出ないように工夫しましょう。
数字の桁や計算を間違えない
数字の桁や計算を間違えないことも重要です。計算間違いが原因で必要な材料が届かないと、代替品の用意などで無駄な作業が生じ工事が遅延します。
また数字の桁間違いは、取り返しのつかない事態に発展する可能性があります。手作業で拾い出しする際は、計算や桁間違いに細心の注意を払いましょう。
転用や転記ミスに気をつける
数量の転用や転記ミスにも、気をつけなければいけません。とくに文字や数字、カンマの転用や転記ミスは厳禁です。
数量の拾い漏れや重複に問題がなくても、肝心の数量が間違っていれば想定した数量と大きく乖離します。数字の単位や転記ミスは厳禁なため、二重チェックなどで対策しましょう。
図面の変更や特記事項を確認する
建築図面の変更や、特記事項がないかも注意しましょう。建築図面は変更が生じることも多く、最新の図面であるか確認しておくのが重要です。
また図面の特記事項に目を通し、数量に影響を与えるような記載がないかも確認しておきます。
特記事項には、図面だけでは表現しきれない詳細事項などが記載されます。
特定メーカーの材料指定といった重要な要素が記載されることもあるため、必ず目を通しておきましょう。
属人化しないようにする
拾い出しの作業は、どうしても経験豊富な担当者に頼りがちです。
その結果、作業のやり方がその人にしか分からない状態になってしまい、ほかの人では対応できなくなる属人化問題が起こります。
もしその担当者が不在になった場合、作業がストップしたり、見積もりに遅れが出るリスクも考えられるでしょう。
また、担当者によって判断が異なることで、拾い出しの精度にバラつきが出るケースも少なくありません。
こうした状況を避けるには、拾い出しの手順を社内で共有したり、作業の記録を残すことが大切です。
積算ソフトや管理ツールを導入して、誰でも同じように作業できる環境を整えるのも効果的です。
専門性の高さが要求される
拾い出しは、図面を読み解いて材料や寸法を把握し、正確に数量を計算するという非常に専門的な作業です。
材料の種類や寸法の見方、割増係数などの知識が必要で、建築の知識や現場の経験がないと正しく作業を進めるのは難しいでしょう。
もし知識が不十分なまま拾い出しを行うと、見積もりの精度が下がり、工事の予算や進行にも影響が出てしまいます。
そのため、社内でのスキル共有や教育の機会を増やし、チーム全体で拾い出しを担える体制をつくることが大切です。
近年では、図面をもとに自動で数量を算出できるソフトもあり、こうしたツールを活用することで専門的な作業をサポートしつつ、効率化を図ることができるでしょう。
積算数量の拾い出しを効率化するポイント
積算における拾い出しの作業は、正確さとスピードの両立が求められるため、いかに効率よく進めるかが重要な課題となります。
ここでは、拾い出し作業の効率化に関するポイントを解説します。
施工順序を意識する
拾い出し作業を効率的に進めるには、施工順序を意識した作業の流れを組み立てることです。
工事は基礎から順に段階的に進むため、その流れに沿って数量を拾い出すことで、資材の重複や抜け漏れを防ぎやすくなります。
例えば基礎工事の数量を先に拾い、その後に柱や梁、壁といった構造部分へと進めていくことで、工程ごとの整合性を確認しながら積算作業ができます。
また、施工順序に合わせた拾い出しは、資材の搬入計画や納品時期の調整にも役立ち、全体の工程管理にも良い影響を与えます。
見積段階での計画が現場のスムーズな進行に直結するため、設計や数量拾いの段階から施工順序を意識しましょう。
拾い出しのフォーマットを作成する
拾い出しのフォーマットがない場合は、エクセルなどでフォーマットを作成すると効率化につながります。
フォーマットを作成する際は、拾い出すべき数量を明確に定義します。そのうえで、図面との対応性や計算のしやすさを意識するのがポイントです。
参考までに、フォーマット作成の一例を記載します。
図面番号 | 部位 | 数量 | 単位 | 計算式 | 備考 | 確認者 |
P−1 | 基礎 | ○○ | m³ | 長さ×幅×厚さ | 鉄筋コンクリート | 田中 |
またフォーマット作成後は設計基準や施工方法が変更になることを考慮し、定期的に見直しましょう。
マーカーを活用する
数量拾いに漏れがないよう、各項目をマーカーでチェックするのも有効です。ピンクなどの図面の色と被らず、目立ちやすい色がおすすめです。
ただしマーカーの色によっては、印刷時に色が消える場合があるため注意しましょう。イエローやオレンジなど光に近い色は、コピー機によっては色が映らない可能性があります。
国土交通省の「公共建築数量積算基準」を参照する
数量拾いの際は、国土交通省の「公共建築数量積算基準」を確認しましょう。数量の表し方や計測方法など、基準が細かく指定されているためです。
なお数量においては、小数点第3位の四捨五入が基準とされています。基本ルールに則った積算が必要なため、実際に積算をする前に読み返す習慣を身につけましょう。
勉強会に参加する
積算作業の精度と効率を高めるには、実務者同士の情報共有も大切な要素です。
拾い出しのミスを減らし、業務の進め方に悩んでいる場合は、勉強会に参加して他の担当者の工夫や失敗事例を知ることが大きなヒントになるかもしれません。
ベテラン社員の実体験をもとに、どのような場面でミスが起きやすいのか、どのような図面の読み方が効率的なのか、ノウハウを共有すれば若手や未経験者のスキルアップにもつながります。
また、BIMのような新しい技術についても、勉強会を通じて知識を深められ、業務全体のレベル向上に役立ちます。
現場ごとに異なる課題を乗り越えるためにも、継続的な学びの場をもつことは非常に効果的です。
積算ソフトを導入する
フォーマットがなく作成も難しい場合は、積算ソフトを導入するのがおすすめです。積算ソフトを活用すれば、複雑な計算も簡単に算出できるため、作業効率が上がります。
積算ソフトを導入する際は、自社のニーズを明確にしたうえで、機能面や操作性、コストで比較しましょう。価格が安いといった安易な理由で選ぶと、失敗する可能性があります。
仕上げ積算ソフト「Neo仕上」の特徴
仕上げ積算ソフトでおすすめなのが、弊社「株式会社アドバン」が提供する「Neo仕上」です。
「Neo仕上」のおもな特徴は、以下の3つです。
- 作図なしで積算できる
- 図面をなぞって拾い出しできる
- さまざまな形式で出力できる
「Neo仕上」は売上高5億〜100億円規模の地方ゼネコン1,000社以上が導入する仕上げ積算ソフトです。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
作図なしで積算できる
「Neo仕上げ」ならPDF図面や写真画像をもとに、作図なしで積算できます。積算するための手間が大幅に削減できるため、業務効率化につながります。
また帳票の出力形式や顧客のデータ管理など、さまざまな業務フローに合わせたカスタマイズができるのも魅力です。
なお既存の業務フローへの適応はソフト側が対応するため、自社で変更する必要はありません。
導入時や導入後のトラブルを防ぎ、安心して導入できます。
図面をなぞって拾い出しできる
JW-CADの図面をカーソルでなぞるだけで、簡単に積算できます。面積や周長、各辺の長さなどもカーソルをなぞるだけで拾い出せます。
手作業の拾い出しで使う三角スケールや電卓など、従来欠かせなかった道具も必要ありません。
図面をカーソルでなぞれば、あとは自動計算され仕上げ積算システムと連動します。
さまざまな形式で出力できる
各部屋や各部材ごとなど、さまざまな形式で出力できるのも特徴です。
根拠付きの拾い図なども出力もでき、データでの保存もできます。
なお「Neo仕上」で作成した積算データは、アドバン社の他ソフトと連携可能です。
たとえば建築見積作成ソフト「建築見積りソフトKensuke Neo」と連動すれば、積算データをもとに見積書を簡単に作成できます。
導入後はソフトを使いこなせるようになるまで、何回でも操作指導を受けられる点も強みです。
以前他社で積算ソフトを導入したけれど、操作が複雑で利用をやめてしまった企業様でも、安心してお使いいただけます。
建築積算数量の拾い出しに関するよくある質問
建築積算数量の拾い出しは積算業務の第一歩であり、図面をもとに必要な資材や工事量を算出する非常に重要な作業です。
しかし、積算との違いが分かりづらい、どの図面を使うべきか、どんなスキルが必要なのかといった疑問をもつ方も多いのではないでしょうか。
ここでは、実際の業務でもよく寄せられる基本的な疑問に分かりやすくお答えします。
拾い出しはどのような図面から行う?
拾い出しは設計図面の内容をもとに行われます。
主に用いられるのは意匠図・構造図・詳細図・設備図などで、建物全体の構成や部材の寸法、仕様を確認するために複数の図面を組み合わせて読み解いていきます。
意匠図では間取りや仕上げ材を、構造図では鉄筋や梁などの骨組みを、設備図では電気や配管の取り回しを拾い出す対象としてチェックします。
正確な数量を導き出すには、図面ごとの役割や読み方を正しく理解しておく必要があります。
拾い出しと積算との違いとは?
拾い出しは、図面から資材や工事の数量を正確に算出する作業のことを指します。
一方、積算はその拾い出した数量に対して単価を掛け、実際の工事費を算出するプロセスです。
つまり、拾い出しは積算作業の「基礎」となるステップであり、ここで誤りがあると、その後の見積もりすべてに影響が及びます。
積算はコスト全体を把握する最終工程であり、拾い出しの精度はその信頼性に大きく関わります。
拾い出しに必要なスキルは?
数量拾いを正確にするには、いくつか専門的なスキルが求められます。
まず必要なのは図面を正しく読み解く力です。建築・土木に関する基本的な知識をもとに、記号や寸法の意味を理解できなければ正しい数量は出せません。
また、計算を正確にする力も必要ですし、Excelや積算専用ソフトなどのツールを使いこなすスキルも欠かせません。
さらに、工事の流れや現場の実態を把握する経験も重要で、こうしたスキルの習得は実務を重ねる中で培われていきます。
積算ソフトの導入で積算数量の拾い出しを効率化しよう
建築積算数量の拾い出しは、建築物の設計図から工事で必要な材料や労務の数量を算出する基本的な作業です。
手作業で拾い出しする場合、拾い落としや計算間違いといったミスが懸念されます。
ミスを防ぐためには、フォーマットの作成や積算ソフトの導入が効果的です。
仕上げ積算ソフト「Neo仕上」は住宅から大型施設まで建物を問わず、内装や外装、外構や建具の積算が簡単にできます。
使い慣れたJW-CADで寸法や面積、周長などを自動的に表示できるため、積算の効率化やミスの低減につながります。
「Neo仕上」が気になった方は、ぜひお問い合わせください。
【アドバンが提供するサービス一覧】

株式会社アドバン代表取締役社長
「建設関連ソフトを通して世の中に貢献する」がモットーです。
創業から20年以上、重要な業務である積算や見積書作成などの効率化・高精度化に貢献したいとの思いで、建設業に特化したシステムの開発に取り組んできました。
すべてのソフトで無料で使用評価をいただくことが可能であり、ほとんどのお客様に十分納得をいただいたうえで、システムを導入していただいています。