公開日 2025.07.08 更新日 2025.07.08

工事原価の直接工事費とは?計算方法や記載方法について解説

工事原価を正確に把握するには、直接工事費の内訳や計算方法を理解しましょう。

 

この記事では、工事価格の構成要素である工事原価と一般管理費の違いを整理しながら、直接工事費に含まれる各費用の内訳と具体的な計算方法について詳しく解説します。

さらに、直接工事費を記載する際の「複合単価」と「材工別単価」の違いについても紹介していますので、工事見積もりや積算の参考にぜひご活用ください。

工事価格とは?

工事を発注者に請求する際に示す金額を「工事価格」といいます。

現場で発生する作業費用だけでなく、会社の運営を支えるさまざまな経費も含めた総合的な費用になります。

 

工事価格は、「工事原価」と「一般管理費」の2要素で構成されます。

ここでは、工事価格を形成する各要素について詳しく見ていきましょう。

工事価格の概要

工事価格とは、発注者が支払う工事代金の総額を指します。

建物や設備の建設・解体・修繕など、さまざまな工事に必要な全てのコストを合計した金額が工事価格となります。

 

見積書の中心となる金額であり、工事を請け負う企業にとっては利益を確保しつつ、発注者に納得してもらうための重要な指標です。

適切な積算で工事価格を正確に計算することが、受注後の安定した施工や利益確保に直結します。

工事原価

工事原価とは、現場で工事を進める際に必要なすべての費用を指します。

材料の仕入れ費用、作業員の人件費、機械や重機の使用料、さらに電気・水道・燃料といった消耗的な経費までが含まれます。

 

工事原価の中には、後述する「直接工事費」が含まれており積算業務では中心となる部分です。

また、仮設足場や仮囲いの設置にかかる「共通仮設費」、現場監督や安全管理を担う人員の人件費「現場管理費」も工事原価に含まれます。

一般管理費

一般管理費は、実際の現場工事とは直接関係しないものの、企業を運営し続けるために必要な経費を指します。

本社や営業所の家賃・光熱費・通信費、事務職員の給料、福利厚生費、広告宣伝費、税金や保険料などが代表的です。

 

工事単位では発生せず、年間を通して固定的に発生する費用であり、経営の安定に不可欠な支出といえます。

一般管理費は通常、工事原価に対して所定の率を掛けて計算し、最終的な工事価格に組み込まれます。

工事原価の直接工事費の内訳

工事原価の中でも、施工に直接必要となる費用が「直接工事費」です。

直接工事費は、工事現場での作業に直結するコストであり、正確な積算が工事全体の利益確保に直結します。

 

直接工事費はさらに「材料費」「労務費」「直接経費」の3つに細かく分かれており、それぞれに含まれる具体的な費用の内容を正しく理解しておきましょう。

ここからは、各項目について詳しく解説します。

直接経費

直接経費とは労務費や材料費以外で、工事の遂行に直接関係する費用を指します。

具体的には「特許使用料」「水道光熱電力料」「機械経費」の3つが代表的です。

 

特許使用料には、特許技術や特殊工法の使用にかかる費用や、それに伴う技術者派遣費用が含まれます。

水道光熱電力料は、工事中に実際に使用した水道や電力などの使用量に応じた費用を計上し、基本料金などの固定費は間接工事費として扱われます。

 

機械経費は、施工に使用する重機や特殊機械の整備費、修理費、運転に必要な人件費、燃料費、さらに減価償却費が対象となります。

材料費

材料費とは、工事するために必要な建材、部品などの購入費用を指します。

コンクリート、鉄骨、木材、ガラス、断熱材、塗料などが代表的で、建物の種類や工事内容により、必要な材料は大きく異なります。

 

また、施工に伴って発生する正常なロス分も材料費に含めることができます。

例えば、加工ミスによる端材や施工時に生じる微量の材料消費も計上可能です。

 

材料を現場まで運ぶための輸送費も材料費に含まれますが、その輸送に使用する車両や機械の維持管理費用は含まれません。

正確な数量と単価の把握が、材料費の積算精度を左右します。

労務費

労務費は、工事現場で作業に従事する作業員に支払われる人件費を指します。

大工、左官、鉄筋工、電気工事士など、現場作業に直接従事する職人の日当や残業手当が含まれます。

休日出勤や深夜作業があれば、その割増賃金も労務費として計上します。

 

ただし、工事に直接関わらない事務職員の給与や、作業員募集のための求人広告費、食事代、福利厚生費などは含まれません。

これらは一般管理費や現場管理費として別途計上します。

 

労務費の積算では、作業人数や日数、各職種の単価を正確に設定する必要があります。

間接工事費とは?

間接工事費とは、工事そのものには直接関わらないものの、現場の運営や会社の経営に必要となる費用を指します。

建設現場で行う作業に直接紐づくわけではありませんが、工事を円滑に進めるために不可欠な経費といえます。

 

民間工事では「諸経費」、公共工事では「共通費」と呼ばれることもあります。

間接工事費は大きく「共通仮設費」「現場管理費」「一般管理費」の3つに分類され、それぞれ異なる役割を担います。

 

共通仮設費は仮設事務所や足場、仮囲いなどの設置・維持・撤去にかかる費用で、工事が終わると撤去される一時的な設備が対象です。

現場管理費は、現場監督や管理スタッフの人件費、安全管理のための訓練費、保険料、通信費、交通費など、現場全体の維持管理に必要な費用が含まれます。

そして一般管理費は、本社や営業所の光熱費や通信費、管理部門の人件費、広告宣伝費、事務用品費、税金など、会社経営を支える費用を幅広く含みます。

直接工事費の計算方法

直接工事費は、材料費・労務費・直接経費の3つの要素を積み上げて算出します。

それぞれの計算方法について見ていきましょう。

直接経費の計算方法

直接経費は、「特許使用料」「水道光熱電力料」「機械経費」の3つの合計で算出します。

特許使用料は、工事で特許や意匠権の対象となる技術を使う場合に支払う使用料で、派遣技術者の人件費も含めましょう。

水道光熱電力料は、工事中に使用した水道や電力、ガスの使用量をもとに計算します。水道局や電力会社が定める使用量計算方法に従い、実際の消費量から積算します。ただし、基本料金など固定的に発生する費用は間接工事費です。

機械経費は施工に使用する機械の整備費や修理費、燃料費、運転する技術者の労務費、さらに減価償却費などが対象です。自社保有の機械なら「建設機械等損料」、リースの場合は「建設機械等賃料」をもとに計算します。

材料費の計算方法

材料費は、使用する資材の数量に単価を掛けて算出します。

ただし、設計図上に記載された数量だけを用いるのではなく、実際の施工で発生するロス分も考慮します。

 

通常は「所要数量=設計数量×(1+ロス率)」としてロス率を加味し、現実に近い数量を算出。

単価については、仕入れ先の見積価格をもとに算出する場合もあれば、経済調査会の「積算資料」、建設物価調査会の「建設物価」など公的な参考資料を用いる場合もあります。

さらに、材料の現場搬入にかかる運搬費も加算されるため、「材料費=所要数量×(購入単価+運搬費)」の計算式で積算されます。

労務費の計算方法

労務費は、作業に必要な人数や時間を考慮し、「歩掛(ぶがかり)」と呼ばれる基準値を用いて積算します。

歩掛とは、ある作業を完了させるために必要となる標準的な人手や時間を数値化したもので、国土交通省が毎年更新する「標準歩掛」に記載されています。

 

計算式としては、「所要人数=設計作業量×該当作業の歩掛」で必要な作業人数を求め、その上で「労務費=所要人数×労務単価(基本日額+割増賃金)」によって最終的な金額を計算。

労務単価も、最新の公表資料を基に設定するのが一般的です。

直接工事費の記載方法

これまで見てきたように、直接工事費は「材料費」「労務費」「直接経費」の3つで構成されていますが、見積書に記載する際は、内訳の記載方法にいくつかの形式があります。

 

主に採用されるのは「複合単価」と「材工別単価」の2つの方法です。

それぞれの記載方法について見ていきましょう。

複合単価

複合単価とは、材料費の中に労務費や直接経費といった施工に必要な費用をあらかじめ加算し、一つの単価としてまとめて記載する方法です。

見積書上では「材工共」と表現されることもあり、材料名ごとにまとめられているのが特徴。

 

コンクリート打設であれば、コンクリート材料の費用に加え施工に必要な人件費や機械経費なども含め、一つの金額として提示されます。

公共工事の見積書作成では複合単価方式が一般的であり、改修工事や比較的小規模な工事にも広く採用されています。

材工別単価

材工別単価は、直接工事費を構成する「材料費」「労務費」「直接経費」をそれぞれ分けて、項目ごとに行を変えて記載する方法です。

 

ある工事項目について、まず材料費、次に労務費、さらに直接経費という順で個別に金額を提示します。

各内訳の費用が明確に表示されるため、積算根拠を詳細に把握でき、積算精度の検証やコスト交渉にも有効です。

 

材工別単価は公共工事ではあまり使われませんが、民間工事や大規模プロジェクトで細かな積算管理を行う場合に採用されるケースがあります

工事原価と直接工事費の理解が積算精度を高める

この記事では、工事原価の中でも「直接工事費」について、内訳や計算方法、記載方法まで解説しました。

 

「材料費」「労務費」「直接経費」を正しく把握することで、見積書作成の精度向上や利益確保に直結します。

「複合単価」「材工別単価」といった記載方法を理解し、状況に応じて適切に積算を行うことが重要です。

建設業向け管理ソフトなら株式会社アドバン

この記事の監修者
株式会社アドバン
田中 博幸

株式会社アドバン代表取締役社長

「建設関連ソフトを通して世の中に貢献する」がモットーです。 創業から20年以上、重要な業務である積算や見積書作成などの効率化・高精度化に貢献したいとの思いで、建設業に特化したシステムの開発に取り組んできました。
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