公開日 2024.08.20 更新日 2024.09.13

建設業の工事原価管理とは?難しいといわれる理由も解説

「建設業の工事原価管理」とは何か、またその重要性についてお悩みの方も多いでしょう。この記事では、工事原価管理の目的や流れ、メリットを解説し、なぜ難しいとされるのか詳しく紹介しています。

また、効果的なシステムの選び方についても触れており、実際の導入事例を参考に、実務での活用方法も紹介。建設業の原価管理について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。

 

建築見積ソフトKensuke Neo

建設業の工事原価管理とは

建設業の工事原価管理とは、工事にかかる外注費や材料費などのコストを計算・管理するプロセスのことです。工事原価管理により、利益の確保や赤字回避が可能となり、事業のコスト改善に寄与します。

工事原価の計上は建設業法で義務付けられており、企業の損益計算において重要な役割を果たします。ただし、工期や資材価格の変動、複雑な項目管理などから、正確な原価把握は難しいとされています。

関連記事:工事原価とは?概要と工事原価を構成する4つの要素

建設業における原価管理の目的

建設業において、原価管理はプロジェクトの財務管理と経営の安定に不可欠な役割を果たします。詳しい目的について、解説しましょう。

予算管理

予算管理の目的は、プロジェクトを計画的に進行させるための予算を設定し、その範囲内で運営すること。計画段階で立てた予算と実際の費用を比較し、予算超過のリスクを常に監視します。

これにより、資金の適切な配分を行い、無駄な支出を防げるのです。予算管理はプロジェクト全体の資金運用を安定させ、計画的な進行を支援します。

費用予測

費用予測は、プロジェクトの進行状況や計画との比較を基に、将来的な費用を見積もる作業です。今後の資金需要を把握し、必要な予算の調整をするために不可欠です。

費用予測でプロジェクト全体の資金計画が明確になり、突然の資金不足を避けられます。予測された費用は、経営陣が適切な意思決定するための重要なデータとなるのです。

費用調整

工事の進行中に発生する予期せぬ変更や追加作業には、費用の調整が必要です。費用調整は、コストの増加を適切に評価し、必要に応じて予算を修正するプロセスです。

プロジェクトが計画通りに進むよう、経費の過剰支出を防ぎます。また、費用調整はクライアントとの交渉や見積もりの再評価にも役立ち、プロジェクトの全体的なコスト管理を強化します。

実績管理

実績管理は、プロジェクトの進捗に伴う実際のコストを把握し、計画通りに進行しているか確認するプロセスです。どの程度のコストが発生し、予算内で収まっているかをリアルタイムで監視します。

実績管理を通じ、費用の過剰支出や不足が早期に発見され、迅速な対応が可能となります。プロジェクトの効率的な進行とコスト管理を実現するために重要だと言えるでしょう。

工事原価管理を行う流れ

工事原価管理は、プロジェクトの財務健全性を維持し、効率的な業務運営を確保するための一連のプロセスです。ここでは、具体的な流れを詳しく説明します。

①標準原価の設定

標準原価の設定は、工事全体の予算を管理するための基準を確立する、最初のステップです。標準原価は、工事に必要な材料費、労務費、外注費、経費など、目安となる費用を基に決められます。

これらの費用は、過去のデータや市場調査などを参考にして算出され、工事開始前に目標として設定。標準原価を設定することで、予算管理がしやすくなり、工事中に発生するコストのコントロールが可能になるのです。

②原価計算

原価計算は、実際にかかった費用を把握し、予算と比較するためのプロセス。計算方法は以下3種類です。

標準原価計算 

実際原価計算 

直接原価計算 

事前に設定した標準値を基に計算 

工事進行中に実際に発生した費用を計算 

(予算と実際の費用の差異を明確にし、無駄や過剰な支出を特定できる) 

費用を固定費と変動費に分けて管理し計算 

(変動費は、工事の進行状況に応じて変動するため、リアルタイムでのコスト管理が求められる) 

上記3つの計算をしたうえで、次のプロセスに進みます。

③差異分析

差異分析は、標準原価と実際原価の差異を明確にし、その原因を探るためのプロセスです。差異が生じた場合、その要因が材料費の高騰、労務費の増加、外注費の予算超過など多岐にわたる可能性があります。

差異分析では、これらの要因を詳細に調査し、どの段階で予算を超過したのか特定。計画段階で見落とされていたリスクや、予算設定の誤りが明らかになり、将来のプロジェクトにおける計画精度の向上につながります。

また、差異が発生した際の早期対応を可能にし、さらなるコスト超過を防止するための有効な手段となるのです。

④改善行動

差異分析の結果を基に、具体的な改善行動を計画・実行します。このステップでは、コスト超過の原因となった要素を是正するための対策を講じます

例えば、材料費の削減策、労務費の最適化、外注先の見直しなどが挙げられるでしょう。改善行動は、一度のプロジェクトで終わるものではなく、継続的に実施されるものです。

定期的な評価とモニタリングを通じ、改善の効果を確認し、新たな問題が発生しないように対応します。

工事原価管理を行うメリット

工事原価管理は、多くのメリットがあります。まず第一に、計画段階から必要なリソースを適切に割り当てることで、無駄なコストを削減し、利益の最大化が可能です。例えば、工事の進行に伴い、予期せぬ追加材料の調達や余分な人員の手配が不要となるため、経費の無駄遣いを防げるのです。

 

また、工事前に利益予測することで、黒字の確保と赤字の回避が実現。具体的には、工事の採算性を事前に計算すれば、利益を確保できる案件に注力し、不採算となる可能性のある案件からは撤退する判断が、迅速にできるでしょう。損益の見通しを明確にすることは、健全な経営を維持するために重要です。

 

さらに、工事にかかるすべてのコストを把握するのは、経費の見える化につながります。材料費や外注費、労務費など各項目の支出を正確に管理できるため、無駄を省きつつ、必要な部分にリソースを集中させられるでしょう。結果として、会社全体の経営効率が向上し、長期的な利益の増加が見込まれます。

工事原価管理が難しいといわれる理由

工事原価管理が難しいと言われる背景には、建設業特有の会計処理の複雑さがあります。他の業界にはない独自の要素が多く、特別な会計知識を必要とするためです。

特に、原価の計算や管理には多くの専門的な理解が求められ、その結果、工事原価管理の難易度が高くなる要因となっています。

理由①勘定項目が複雑で難しい

建設業界では、通常の会計処理に加え特有の勘定項目が多く存在します。例えば、工事に関する経費は「未成工事支出金」として計上され、完成工事高が計上されるまでの間に発生する、さまざまなコストが詳細に分類。

経理担当者は通常の勘定項目に加えて、建設業特有の項目を正確に把握し、適切に処理する必要があるのです。これにより、勘定科目の管理が非常に複雑になり、ミスや見落としのリスクが高まります。

理由②費用の構成が複雑で難しい

建設業では、原価を構成する要素が多岐にわたります。材料費や労務費に加え、「外注費」や「共通仮設費」など、独特の項目が存在。特に外注費については、下請け業者や一人親方などへの支払いが含まれるため、管理が一層煩雑です。

さらに、共通仮設費や現場管理費など、共通費用の分配や計算も求められるため、個別のプロジェクトごとの正確な原価把握が難しい点が挙げられます。

理由③売上・原価を計上するタイミングが難しい

建設業では、工事の進捗に応じて売上や原価を分割計上する「工事進行基準」が採用されています。この基準では、工事が完了していなくても一定の進捗に達した時点で売上を計上する必要があり、その進捗度の正確な評価が求められます。

また、進捗度に応じた原価の配分や、未成工事支出金の計上なども含め、経理処理が複雑化。このタイミングを誤ると正確な収益認識ができず、経営判断に悪影響を及ぼすリスクがあるのです。

理由④外注費と労務費の線引きが難しい

建設業では、外注費と労務費の区別が曖昧になりがちです。外注費とは、外部の業者や一人親方に対して支払われる費用のことで、建設業特有の経費として扱われます。

 

しかし、労務費に該当するかどうかは、依頼内容や契約形態によって異なるため、判断が難しい場合があります。例えば、自社が材料費を負担し、作業のみを他業者に委託した場合や、一時的な人材支援を依頼した場合など、労務費に分類されるのか、外注費として処理されるのかは慎重な判断が必要。

このような区分が曖昧な場合、適切な原価管理が困難になるのです。

関連記事:建設業における労務費とは?計算方法や人件費との違いを解説

理由⑤経理業務の負担が大きい

工事原価管理は、専門的な知識と技術が求められます。一般会計とは異なる特別な処理が必要であり、担当者には知識を深く理解しなければいけません。

多くの企業では、専用の積算ソフトを使わずにエクセルなどの汎用ソフトを利用しているため、データの入力や管理が手作業に依存しがちです。そのため、複数の工事現場から情報を集約する際に手間がかかり、入力ミスやデータの不整合が発生しやすくなるのです。

このように、工事原価管理の経理業務は時間と労力がかかるため、担当者の負担が大きくなる傾向があります。

建設業向けの原価管理システムの選び方

建設業向けの原価管理システムを導入する際は、さまざまなポイントを考慮する必要があります。システムの選定は企業の業務効率やコスト管理に大きな影響を与えるため、慎重に検討しましょう。

ここでは、選び方のポイントを詳しく解説します。

導入の目的を明確にしておく

まずは、システム導入の目的を明確にしましょう。自社がシステムを導入することで達成したい目標や、改善したい課題を明確にすることで、システムを選ぶ基準が定まります。

例えば、工事全体の業務効率化を目指すのであれば、契約から売上の回収までを一元管理できるシステムが適しているでしょう。

自社が効率化させたい業務範囲をカバーできるか

次に、自社が効率化したい業務範囲をカバーできるか確認しましょう。原価管理だけでなく、予算管理や支払管理などの機能を持つシステムも多く存在します。

さらに、プロジェクト管理、チャット機能、工事台帳の管理など、業務のあらゆる側面をサポートする機能が備わったシステムもあります。自社が抱える業務の負担を減らし、効率化を図れるか見極めましょう

自社の計上・運用方法に対応できるか

自社で採用している会計基準や運用方法に、システムが対応しているかも確認すべきポイント。例えば、工事進行基準や原価回収基準など、特定の計上方法に対応しているか、また配賦基準に合った設定が可能か確認するのも大切。

適切にフィットしないシステムを導入してしまうと、運用が煩雑化し、かえって業務効率が低下するリスクがあります

システムはクラウド型かオンプレミス型か

システムの導入形態も重要な選定要素。クラウド型は、インターネット経由でどこからでもアクセスできる利便性がある一方、セキュリティ対策が重要です。

一方、オンプレミス型は、自社サーバーでの運用が可能なため、カスタマイズ性やセキュリティの制御が高いですが、初期コストや保守費用がかかります。自社のニーズやセキュリティ要件に合わせて選びましょう。

一元管理機能が搭載されているか

建設業では、事務所と現場が離れているケースが多く、情報の一元管理が求められます。一元管理機能が搭載されているシステムであれば、現場からのデータもリアルタイムで集約でき、正確な原価管理が可能です

経営判断に必要なデータが即時に取得できるため、迅速に対応できるでしょう。

サポート体制が充実しているか

システム導入後のサポート体制も、選定時の重要なポイント。サポートの範囲や内容、対応時間などが自社の業務時間に合っているか確認しましょう。

特に、複雑なシステムを導入する場合、トレーニングや導入支援があると安心です。サポート体制がしっかりしているシステムを選べば、運用時のトラブルに迅速に対応でき、安定した運用が期待できます。

原価管理ソフトのタイプ

原価管理ソフトには、建設業務の効率化をサポートするための多様なタイプがあります。それぞれのタイプが異なるニーズに応える機能を備えており、企業の運営方針や業務範囲に応じて選択しましょう。

原価管理の関連業務も効率化できるタイプ

原価管理だけでなく、前後の業務も包括的にサポートするタイプです。見積作成や予算管理から始まり、支払や請求までのプロセスを一元管理することで、業務全体の効率化を実現。

原価の詳細な分析機能や、各プロジェクトのコスト構造を把握するためのツールも含まれているため、原価管理に関連するあらゆる業務を統合的に管理できます。原価管理を中心とした業務効率化を目指す企業にとって、おすすめのタイプでしょう。

他の業務の効率化にも対応しているタイプ

原価管理を超えて、営業活動やバックオフィス業務など、幅広い業務の効率化をサポートします。例えば、スケジュール管理やワークフロー機能が統合されており、社内外の連携が容易に。

また、クラウドベースで提供されるため、場所を問わずリアルタイムで情報共有が可能。経営情報の集約や顧客管理などもカバーしており、業務全体の効率化を図りながら、経営戦略の迅速な意思決定をサポートする機能が備わっています。

会計にも対応しているタイプ

会計機能を統合したソフトウェアは、原価管理だけでなく、財務会計や管理会計の機能も併せ持っています。工事原価のデータを直接会計処理に反映できるため、データの連携における手間を省き、会計業務の効率化を実現。

財務諸表の作成や予算対実績管理なども可能で、企業全体の財務状況を正確に把握できます。リアルタイムでのデータ更新により、経営陣は最新の財務情報に基づいて、迅速な意思決定ができるでしょう。

簡単建築見積ソフトなら「Kensuke Neo」

建築見積りソフトKensuke Neo

建築見積りソフトKensuke Neo」は、建設業向けの本格的な見積ソフトであり、エクセルに似た使い勝手が特徴。直感的なUI/UXにより、初見でも簡単に操作できるため、導入コストを削減しやすいです。

豊富な機能を備え、見積作成から支払管理まで一元的にサポート。多様な工事規模に対応可能で、効率的な業務運営を支援してくれます。

建築見積ソフト「Kensuke NEO」の導入事例

株式会社山上組様の導入事例

株式会社山上組様の導入事例

奈良県の株式会社山上組様は、積算の効率化と誰でも操作できるシステムを求めて「Kensuke NEO」を導入しました。簡単な操作性と豊富な機能により、短期間での積算が可能となり、手作業に比べて大幅な効率化を実現。

操作が簡単でありながら、柔軟性のあるシステムとして高く評価されています。

株式会社山上組様の導入事例を詳しく見たい方はこちら

株式会社ナカシロ様の導入事例

株式会社ナカシロ様の導入事例

愛知県名古屋市の株式会社ナカシロ様は、積算業務の手間を軽減するために「Kensuke NEO」を試用。無料試用期間中に複数の物件で実際に使用した結果、その使いやすさにより建築部門全体での利用を決定しました。

操作が直感的で、短期間での習得が可能であることが導入の決め手となりました。

株式会社ナカシロ様の導入事例を詳しく見たい方はこちら

石坂建設株式会社様の導入事例

石坂建設株式会社様の導入事例

富山県富山市の石坂建設株式会社様では、20年にわたって「Kensuke NEO」を使用しています。従来の手作業による積算に比べ、約5倍の効率化を実現し、見積提出に余裕を持てるようになりました。

見積内容をより詳細に検討できる環境が整い、現在ではこのソフトウェアが欠かせない存在となっているようです。

石坂建設株式会社様の導入事例を詳しく見たい方はこちら

【導入事例をもっと見る】 

 

工事原価管理はソフトを導入して効率的に

いかがでしたでしょうか?この記事では、原価管理の目的やメリット、難しさについて詳しく解説しました。建設業の工事原価管理について、おわかりいただけたかと思います。

 

工事原価管理を効率的にするためには、適切なシステムの導入が重要です。エクセル感覚で操作できる「建築見積りソフトKensuke Neo」は、豊富な機能を備えた本格的な見積ソフトであり、導入も容易です。原価管理ソフトをお探しの方は、Kensuke Neoの導入を検討してみてください。

建設業向け管理ソフトなら株式会社アドバン

 

【アドバンが提供するサービス一覧】

この記事の監修者
株式会社アドバン
田中 博幸

株式会社アドバン代表取締役社長

「建設関連ソフトを通して世の中に貢献する」がモットーです。 創業から20年以上、重要な業務である積算や見積書作成などの効率化・高精度化に貢献したいとの思いで、建設業に特化したシステムの開発に取り組んできました。
すべてのソフトで無料で使用評価をいただくことが可能であり、ほとんどのお客様に十分納得をいただいたうえで、システムを導入していただいています。