建設業はなぜ人手不足が進むのか? 原因と解決策をわかりやすく解説
近年、建設業界では深刻な人手不足が問題となっています。この問題は労働力不足だけではなく、日本の社会基盤を支える建設業の将来を左右する深刻な事態です。
このままだと2025年には、建設業の労働人口が約90万人不足する予測も出ています。インフラ整備の遅延や建設コストの上昇など、社会全体に影響を与えるでしょう。
今回は建設業の人手不足が進む原因と解決策を、わかりやすく解説します。建設業界の人手不足を解決するためには、多角的なアプローチが必要です。
建設業界の人手不足で苦労されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
建設業の人手不足が進む原因
建設業の人手不足が進む原因は、おもに以下の3つです。
- 業界の高齢化
- 給与水準が低い
- 需要の増加に対応できていない
建設業の人手不足は、経営者や人事担当者にとって悩ましい課題です。何が原因で人手不足に陥っているのか、1つずつ詳しく見ていきましょう。
業界の高齢化
建設業界が人手不足に陥っている原因の1つが、労働人口の高齢化です。
国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」によると、建設業の就業者数は過去数十年の間に大幅に減少しており、中でも若年層の数が減少しています。
なぜなら建設業に対するネガティブなイメージが根強く、若者にとって魅力的な職業と捉えられていないためです。
具体的には、高所作業の危険性や長時間の肉体労働、体育会系のイメージなどです。またキャリアアップできるかといった、将来性を不安視する声もあります。
このまま業界の高齢化が進めば、熟練工の高齢化に伴い培ってきた技術やノウハウが失われます。さらに体力的な衰えが原因で、生産性や安全性にも影響が出るでしょう。
若者が来ないことで業界の高齢化が加速化しており、悪循環に陥っているのが現状です。
給与水準が低い
建設業界の給与水準が低いのも、原因の1つです。若年層は将来の収入やキャリアアップを重視するため、低賃金かつ不安定な仕事には魅力を感じにくい傾向にあります。
国土交通省「建設業における賃金等の状況について」によると、製造業と建設業の賃金推移を比較した場合、製造業の賃金は50代から54歳まで上昇し続けるとのデータがあります。
一方、建設業で賃金上昇のピークを迎えるのは、40代後半です。つまり建設業では比較的早い段階で、賃金の上昇が頭打ちになります。
また建設業では日給制を採用している企業が多くいため、天候不良や体調不良による欠勤などで収入が不安定です。このことも、若年層が魅力を感じにくい理由となっています。
需要の増加に対応できていない
建設業は人手不足や高齢化といった深刻な問題を抱えながらも、その需要は拡大の一途を辿っています。
国土交通省「令和4年度(2022年度)建設投資見通し」によると、近年、建設投資額は右肩上がりで推移しており、中でも民間投資が活発です。
要因はインフラ整備の遅延や老朽化、災害からの復興、都市開発など、さまざまな要因が複合的に作用しているためと考えられます。
しかしながら需要の拡大に対し、労働力の供給が追いついていないのが現状です。
今後も需要と供給のミスマッチが続けば、作業員の負担増加や工期の遅延、建築コストの増加といった悪影響が懸念されるでしょう。
建設業の人手不足が自業自得と言われる理由
建設業の人手不足が深刻化する一方で、人手不足の原因は経営者の「自業自得」という見方もあります。人手不足が自業自得と言われるおもな理由は、以下の3つです。
- 長時間労働
- 古い体質
- 働き方改革
なぜ厳しい意見が散見されるのか、それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。
長時間労働
建設現場は残業や休日出勤が常態化しているケースが多く、プライベートな時間が確保しにくいというイメージが根強くあります。
実際に建設業界は週休1日が一般的という時代もあったため、このイメージが現代でも残っているのが原因です。
また建設業は特性上、現場へ向かうまでの移動時間や作業後の事務所に戻る慣習などにより、時間外労働が発生しやすい環境です。
長時間労働のイメージを払拭するためには、完全週休2日制を導入したり、現場からの直行直帰を認めるといった改善が求められるでしょう。
古い体質
建設業は伝統的な慣習やルールが残り、新しい働き方や価値観を取り入れにくいというイメージがあります。
たとえば他業種のように多様な人材の活用が進んでおらず、女性や外国人労働者の受け入れが遅れているイメージがあります。
また年功序列の給与体系など、給与評価制度が旧時代的な企業があるのも業界が古い体質のままだといわれる理由です。
前時代的な労働環境というイメージを払拭させるには、給与体系の見直しや女性や外国人の積極採用など、古い体質から脱却している姿勢を見せるのが大切です。
働き方改革
建設業界は、残念ながら旧来の3K(きつい・汚い・危険)のイメージが根強く残っています。建設業の従来の働き方は、時代に合わなくなっているのが現状です。
そこで国土交通省は建設業の働き方改革を推進するため、旧来の3Kに変わる「新3K」を提唱しました。
新3Kは、「給与・休暇・希望」の3つの要素を表しており、建設業界を現代の働き方に合わせた魅力的な環境へと変える、といった意思が込められています。
なお働き方改革の一例として、AIを活用した労働管理システムを導入している事例があります。現場作業員の健康管理や労働状況を、システムとAIで管理するものです。
作業員の疲労度チェックや各自に合った予防対策など、作業スケジュールの調整に役立っています。生産性向上と労働環境改善を目指し、新3Kに取り組むことが求められます。
建設業の人手不足が進むと将来どうなる?
建設業界の人手不足が進むと、将来的に下記のような影響が生じる可能性があります。
人手不足による影響 |
内容 |
建設コストの上昇 |
人件費の高騰、工期の遅延、資材費の高騰など |
建設品質の低下 |
経験不足の労働者の増加、安全管理の不徹底など |
社会インフラの老朽化 |
維持管理の遅延、災害時の復旧遅延など |
新規建設の抑制 |
建設コストの上昇、公共事業の縮小など |
とくに道路の陥没や橋の通行止めといったインフラの老朽化は、日常生活に大きな不便をもたらすでしょう。
建設業の人手不足は単なる業界の問題ではなく、社会全体の課題として捉えるべきです。早急に解決策を見出し、持続可能な社会を築いていくことが求められます。
建設業の人手不足を防ぐ解決策
建設業の人手不足を防ぐ解決策は、おもに以下のとおりです。
- 業界イメージの改善
- 適切な工期の設定
- 生産性の向上
高齢化が進む建設業では若年層を中心に建設業の魅力を伝え、人材の流出を防ぐことが求められます。では、それぞれの解決策を詳しく見ていきましょう。
業界イメージの改善
長時間労働といったネガティブな要素は、若年層の採用を阻み人手不足を深刻化させています。そのため、近年では建設業界のイメージアップに向けた取り組みが活発化しています。
また国土交通省が中心となり、建設業のイメージ改善プロジェクトも立ち上げられました。
具体的には、長時間労働の是正や残業時間の削減といった働き方改革の推進です。
加えて空調設備の整備や休憩所の設置など、職場環境の改善も必要です。さらに若手の将来設計を明確にするといった、キャリアパスの設定も求められるでしょう。
適切な工期の設定
建設業界は人手不足という深刻な問題を抱えながらも、建設需要の拡大に伴い多くの工事が短工期で実施されています。
この短工期化が労働者の長時間労働を招き、人材の離職率上昇の一因となっています。労働者のモチベーション低下や離職率の上昇を招くため、早急に改善しなければなりません。
短工期化による問題を解決するためには、発注者と受注者が協力し余裕を持った工期の設定が必要です。
なお国土交通省では「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」を策定し、適切な工期設定の重要性を周知徹底しています。
生産性の向上
建設業の生産性向上は業界全体の課題であり、解決のためには人手による作業の自動化や業務効率化が不可欠です。そのために重要なのが、AIやICTの導入です。
従来、建設現場における図面や工程画像の管理は、紙やCD-ROMなど物理的な媒体が主流でした。そのため、情報共有に時間や場所の制約が生じるのが欠点です。
しかしクラウド技術の普及した現在では、図面や工程画像をクラウド上で一元管理できます。情報共有が円滑に進むため、業務が効率化し生産性の向上につながっています。
さらにAIを導入すれば、建設現場でのルーチンワークや監視作業の自動化も容易です。人為的なミスを減らし、作業の精度向上にもつながるでしょう。
ロボットやAI、ICTといった技術の導入は建設現場の生産性向上に大きく貢献しています。建設業の人手不足を解消するためには、もはや欠かせない要素といえるでしょう。
建設業の人手不足に対する国土交通省の対応
建設業の人手不足に対する国土交通省の取り組みは、おもに以下の2つです。
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入促進
- i-Construction(ICT)の推進
建設業界の人手不足への対応は、国土交通省がとくに注力している課題の1つです。それぞれの取り組みを詳しく解説します。
建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入促進
建設キャリアアップシステム(CCUS)とは、建設現場で働く技能者の資格や実績などを一元管理し、その情報にもとづいて適切な評価や処遇につなげるシステムです。
いわば建設業界における「履歴書」のようなもので、個々の技能者のスキルやキャリアパスを可視化し、建設業界全体の底上げを目指すことを目的としています。
日本の建設業界は少子高齢化による労働力不足や、若年層の建設業への関心の低下といった問題を抱えています。その課題解決に効果的なのが、CCUSの導入です。
たとえば、企業にとってCCUSの導入は人材の適正配置に役立ち、生産性向上につながります。また自身のスキルが客観的に評価されるため、作業員のモチベーションも上がります。
CCUSの普及は、建設業界が魅力的な職場へと変わるために必要な取り組みだといえるでしょう。
i-Construction(ICT)の推進
i-Construction(ICT)とは、国土交通省が推進する建設現場におけるICT(情報通信技術)の活用を促進し、生産性向上を目指した取り組みです。
従来の建設現場で実施されている作業にICTを導入し、より効率的かつ安全な施工の実現を目指しています。
たとえば測量にドローンを使えば、人力よりも短時間で高精度な測量を実現できるでしょう。
またVR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術を使った施工前のシミュレーションなど、現場での作業指示の可視化もICTで対応できます。
i-Constructionは、まだ導入が始まったばかりの取り組みです。とはいえ、建設現場の生産性向上のためには、今後ICTは欠かせない要素になるといえるでしょう。
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まとめ:ICTを活用して建設業の人手不足を改善しよう
日本の建設業界は少子高齢化による労働力不足や、若年層の建設業への関心の低下といった問題を抱えています。
人手不足による生産性の低下を防ぐためには、働き方改革による業界のイメージアップが不可欠です。若者にとって建設業が魅力的な職種になれば、人手不足の解消につながります。
国土交通省も、建設業界の人手不足問題の解決に向けて取り組んでいます。建設労働の需要は今後も増加傾向にあるため、ICTなどを活用し積極的に取り組みましょう。
【アドバンが提供するサービス一覧】
- 建築見積ソフト「Kensuke Neo」
- 仕上積算ソフト「Neo仕上」
- 工事原価計算ソフト「Neo原価」
- RC躯体積算ソフト「松助くん」
- 作業日報管理ソフト「Neo日報」
- ワークフロー管理ソフト「ネオ ワーク」
株式会社アドバン代表取締役社長
「建設関連ソフトを通して世の中に貢献する」がモットーです。
創業から20年以上、重要な業務である積算や見積書作成などの効率化・高精度化に貢献したいとの思いで、建設業に特化したシステムの開発に取り組んできました。
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